中国武術への道(旧)

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Vol.10 内三合 内なるエネルギーの秘密(その一)

皆さんは、「心意気(こころいき)」という言葉をどのような意味にとらえるだろうか?「上司に私の心意気を伝えた」とか、「その心意気やよし」「あの人の言動にとても心意気を感じる」というように前向き・積極的・気概など、意志の強さや、自分自身の気持ちを奮い立たせるポジティブな言葉として使うと思う。私たちの使う日本語では、「心意気」は「心」と「意気」からなる熟語として説明される。意志や感情をつかさどる「心」と、目的・目標を達成し、やり遂げようとする強い気持ちや考えを「意気」と表している。日本語の場合、感情をつかさどる「心」と「意」そして「気」の境界線はあいまいだ。
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Vol.9 太極拳と易 番外編

「太極拳と易」という前・中・後編では、太極拳との関連を易の本質としての「変化」を中心に「循環」するエネルギー(勢)にスポットを当ててお話しした。易や太極思想の核心部分である「陰陽」「五行」「八卦」については、改めて別の機会を持ちたいと考えている。今回は番外編として太極拳と直接の関係はないが、易の理解をより深めるために二人の日本人のエピソードを紹介しよう。一人目は、易経を学んだ広島の先人である頼山陽(らい・さんよう)。二人目は、易の本質である「変化」を体得した上で、「居着く」ことの危険性を説いた剣豪・宮本武蔵だ。
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Vol.8 太極拳と易(後編)

易において太極は、宇宙の根源として重要な概念である。「太極者,無極而生,陰陽之母也」(※)訳すと、太極は無極から生まれ、陰陽の母(元)である。太極は、その存在の前に無極から生まれたとされている。別な解釈では、「無極而太極」(無極にして太極)と言いこの場合、上記左の無極図を無極太極図、右図を無極太極陰陽図あるいは陰陽太極図(太極陰陽図)などと呼び方もさまざまだ。別な太極図②も併せて紹介しよう。無極との関係を来氏太極図(※)で観ていただきたい。円図(圓圖)とも呼ばれる。円環状に描かれた内円中の空洞が太極(無極太極図)を表し、円環の外円内の黒白の色が陰陽両儀を表す。
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Vol.7 太極拳と易(中編)

太極拳の特徴とは何だろうか?数ある中国武術の門派の中で太極拳と名付けられるに至ったこの門派の特徴をみてみよう。太極拳の動作は、「如長江大河,滔滔不断」。「長江(揚子江)大河の如し、滔滔(とうとう)として絶えず」と言われる。太極拳を演武する時、手はあたかも「糸を紡ぐが如く」、足の動きは「停まるに似て停まるにあらず」、綿々不断として留まることがない。このようにひとつの動作から次の動作につながるときに止まったり、途切れたりしない動作の要領を「相連不断」あるいは「連綿不断」と表現した。
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Vol.6 太極拳と易(前編)

太極拳の「太極」とは一体なんだろうか?「太極」という言葉はとても古く、中国の古典、「易(経)」の中に見ることができる。中国に限らず古代より人類は、天災・地変・飢饉・戦乱にさらされてきた。易は、不確実で見えない未来を予知し、天変地異を予言する技術として発達した。さらに何気ない日常から始まり宇宙に存在するあらゆるモノとコトを深く観察し、大宇宙の森羅万象の起源・生成を解き明かす帝王の学問として重要な位置を占めるにいたった。
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Vol.5 簡化太極拳雑話(後編)

簡化二十四式太極拳の「二十四式」とは24個の技法(勢)がつながった套路(とうろ)という意味だ。それまでの太極拳の套路は非常に長く、套路を一回通して練習すると、1時間を超えるものさえあった。そこで老若男女問わず広く愛好され、健康法として役立つことを目標に、中華人民共和国の国家体育運動委員会により1956年に発表されたのが、簡化二十四式太極拳だ。
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Vol.4 簡化太極拳雑話(中編)

太極拳といえば柔らかくゆっくりと動くというイメージがあると思う。それは、楊家(楊氏)太極拳の三代目、楊澄甫(よう・ちょうほ、楊露禅の孫)の教授したスタイルの影響が大きい。楊家太極拳の初代楊露禅とその息子たちの武芸は評判を呼び、北京を中心に多くの武術家が学んだ。
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Vol.3 簡化太極拳雑話(前編)

現在、世界中でもっとも愛好されているのは、簡化二十四式太極拳だ。簡化二十四式をお話しする前に簡単に太極拳の歴史を俯瞰してみよう。これから述べる歴史や背景は、実践者として太極拳を続け、歴史的真実に近づきたいと探求し、分析してきた結果である。太極拳の発祥の地は河南省黄河の中流域といわれている。この一帯は中原(ちゅうげん)といい、黄河が運んだ肥沃な土の恩恵を受けた国内屈指の穀倉地帯だ。
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Vol.2 太極拳の多面性

「太極拳」と聞いて、皆さんは何をイメージするだろうか?健康法?表演大会?中国三千年の歴史?気功法の一種?「群盲象を評す」(ぐんもう、ぞうをひょうす)ということわざがある。数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う、というインド発祥の寓話だ。「木を見て森を見ず」と同様に使うこともあり、真実は多面的であり、一部分だけをみると全体を見誤るという教訓である。
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Vol.1良師との出会い

太極拳を始めて45年になろうとしている。職業武術家ではないが、趣味としては深入りしすぎた感もある。たまたま縁があった老師との出会いであったが、ここまで自分の人生に大きく影響を及ぼすとは当初は考えもしなかった。 道場をさがすにしても今でこそネ...
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