中国武術への道(旧)

中国武術への道(旧)

Vol.22 外三合 番外編 日中刀剣小考

今回は、外三合のシリーズを一旦お休みして、刀剣事情の周辺について触れてみたい。こうした刀剣の類は、槍や戟、弓矢をはじめとする武芸十八般の中で主力兵器の一角を占めている。中国武術の発展や門派創出において兵器法と素手の武術では多くは密接な関係を持ってきた。外三合や勁との関係に限らず、今後も刀剣をはじめとするさまざまな兵器法を話題に取り上げてみたい。前半部分は、兵器法と徒手空拳の関係について、後半部分は簡単ではあるが日中の刀剣事情について触れてみよう。道具は、人間にとって身体の能力を拡大したもので「道具は身体の延長」といえる。
中国武術への道(旧)

Vol.21 外三合 日本刀の鍛錬からみた勁の特徴(その三)

前回は、中国武術の基本原理、とりわけ「勁」について日本刀を通して説明しようと試みた。それは、日本の古流剣術や作刀に造詣の深い老師より日本刀にまつわる逸話にからめて中国武術のお話を伺う機会が何度もあったからだ。今回紹介できなかったが、技を練る時のイメージに研ぎの研磨や刀を砥石に当てる角度や方向を重ね合わせた。また、焼入れによって生ずる、ある種の刃文について勁の「冴えと切れ」の説明となったりと、多岐に及ぶ。
中国武術への道(旧)

Vol.20 外三合 日本刀の鍛錬からみた勁の特徴(その二)

内三合は、内面の力によって身体の外面の力を最大限に引き出す。外三合は、逆に内面を支える器であり、具体的な技術へとつながる。内三合・外三合は相互に補完していることを内外相合といい、合わせて六合となる。六合は、「勁」あるいは「勁力」となって攻防技術に生かされている。さて、日本語ではあまりなじみのない「勁」という漢字であるが、風雪に耐える芯のある強い草を指す勁草(けいそう)が比較的知られている言葉だろうか。門派ごとに「勁道」の特徴や種類はさまざまであるが、「勁」とは、中国武術を理解するうえで核心のキーワードである。「勁」を一言で表現するなら「精錬された強い力」だ。数十年前、北派拳術は勁を用いるから高級、南派拳術は力を用いるので低級というような表現もあった。
中国武術への道(旧)

Vol.19 外三合 勁によるエネルギーの統一 (その一)

心意気は単独では真価どころか存在することができない。骨や筋肉によって構成される身体という器があって初めて安定し、具体的な技として発揮できるといえる。気のエネルギーも器である外三合の助けを借りることによって力の方向を定めることができる。理想的な身体の動きを導く力を「勁力(けいりょく)」あるいは、単純に「勁」(けい・jìn・ヂィン)という。勁の通る道を「勁道(けいどう)」といい門派ごとにそれぞれ特徴をもっている。外面の統一を「外勁(がいけい)」、内面の意念と結びついたものを「内勁(ないけい)」と分類されている。
中国武術への道(旧)

Vol.18 内三合 番外編 It hits all by itself.(無拳無意)

ロイ・チャオ(喬宏、Roy Chiao・1927~1999)が演じる少林寺の老僧(老師)と、武術修行についての問答のシーンがある。実はこの老僧との場面は香港公開版のみに使用され、国際公開版からはカットされていた。公開当時は、この会話のシーンが理解されにくいと判断されたのだろうか。1998年発売のワーナー版ソフト「ディレクターズ・カット版」でこの場面が挿入された。因みにこのシーンは、会話の内容を改変した別テイクが後の『死亡の塔』に流用されている。
中国武術への道(旧)

Vol.17 内三合 番外編 Don’t think. FEEL! (その二)

「考えるな!感じろ!それは、月を指す指のようなものだ。指に意識を向けている場合ではない、そんなことでは天の美を見失ってしまうぞ」と続く。指し示した指先にばかり目を向けていたら、その先にある輝かしい月の存在に気付くことはないぞ、という寓話である。
中国武術への道(旧)

Vol.16 内三合 番外編 Don’t think. FEEL!

今回は映画「燃えよドラゴン」のワンシーンをテーマに取り上げてみたい。主演は、ブルース・リー(Bruce Lee)(1940~1973)(以下・李小龍)。1973年、映画「燃えよドラゴン」(原題:ENTER THE DRAGON 龍争虎闘)がアメリカを皮切りに世界中で大ヒット。その後、始まるカンフーブームを巻き起こした。
中国武術への道(旧)

Vol.15 内三合 内なるエネルギーの秘密(その六)

『気』とは何か?まずは、言葉の上から『気』を紐解いてみよう。中国や日本において『気』は様々なとらえ方をされている。日本においては、病は『気』からというように、『気』と「心」は分かちがたい概念ととらえ、『気』と心の在り方を合わせて表現されている。皆さんも日本語の心や感情を表す『気』に関する言葉を想起してみていただきたい。「気になる」、「気が合う」、「気が散る」、「気の毒」等、十や二十はすぐに思い浮かべることができると思う。
中国武術への道(旧)

Vol.14 内三合 内なるエネルギーの秘密(その五)

『気』とは何か?まずは、言葉の上から『気』を紐解いてみよう。中国や日本において『気』は様々なとらえ方をされている。日本においては、病は『気』からというように、『気』と「心」は分かちがたい概念ととらえ、『気』と心の在り方を合わせて表現されている。皆さんも日本語の心や感情を表す『気』に関する言葉を想起してみていただきたい。「気になる」、「気が合う」、「気が散る」、「気の毒」等、十や二十はすぐに思い浮かべることができると思う。
中国武術への道(旧)

Vol.13 内三合 内なるエネルギーの秘密(その四)

今回は、内三合の「心意」特に「意」について形意拳(※1)の考え方を中心にお話をしよう。形意拳という門派では、究極の状態を次のように表現している。「拳無拳、意無意、無意之中是真意」略して「無拳無意」といい、本来「形」があって無いようなものである。無であるが故にあらゆる事象、すなわち有に対処し、打ち破ることができる。これを無意の中にこそ真意がある、という。無意とは無為(※2)にも通じる自然の状態。私たちの体は、特に意識しなくても熱い鍋やアイロンに直接手が触れると反射的に手を引っ込めてしまう「脊髄反射」を備えている。さらに「火事場の馬鹿力」。家が火事になった時に、普段は非力と思われている人が家にあった重たい家具を抱えたまま脱出したという逸話から転じて、「とんでもなく追いつめられると本来無いほどのパワーを発揮する」という意味である。
inserted by FC2 system