Vol.49 外三合 三節 番外編(まとめ) ~前編

Vol.38 閑話そしてVol.39から始まる『三節の番外編』を通して「三」について考察してきた。
番外編も10回となり、表題の「その一~その十」を見るだけでは内容を類推することができない。そこでこの回は「まとめ」とすることにより、それぞれの内容を一目で類推いただけるようになっており、表題から各ページにリンクをすることもできる。

Vol.38 外三合 エネルギーの統一 閑話

三次元世界もまた、縦・横・高さという3つの座標で表される広がりから成り立っている。

「過去・現在・未来」「朝・昼・晩」「三段論法」といった時間系列、
「上・中・下」「金・銀・銅」「松・竹・梅」のような階層や
「赤・緑・青(三原色)」「司法・行政・立法(三権分立)」
「魂・精神・肉(三位一体)」のような安定、分割と包括など根本原理をこの世には「3つ」で表されている表現が多く見られる。
一方で複雑な関係を表現する「三つ巴」や「三角関係」という言葉もある。
三つ【閑話】を紹介した。
その一 ~毛利元就の「三本の矢の教え」の故事
その二 ~日本古武術の「三角矩」(さんかくく)
その三 ~中国哲学の「三才」から形意拳の三才式

① 老小架_金剛搗碓_1
① 老小架_金剛搗碓_過渡式1

Vol.39 外三合 三節 番外編(その1)

外三合のシリーズが、Vol.19から始まった。Vol.34では三歩の工夫が登場し、続いてVol.35で三節(三幹九節)・Vol.36~37 三尖相照というように数字の「三」が随所に出てきた。

中国では「三」に限らず符牒として数字にさまざまな意味を与えてきた。
三才や五行・八卦など数字を通した物事のとらえ方や世界観は、中国医学・芸術・文学・占星術だけでなく生活のすみずみまで影響を見ることができる。中国武術も例外ではない。番外編(その1)では0(ゼロ)そして一から十までの符牒を示し、特に三才について形意拳の開門式(三才式)を張占魁派と尚雲祥派の両派で紹介している。

② 老小架_金剛搗碓_2
② 老小架_金剛搗碓_過渡式2

Vol.40 外三合 三節 番外編(その2)

三才に時間系列と空間系列の二面がある。
三才 天地人 (天→地→人) 時間系列と
三才 天人地 (天・人・地) 空間系列

空間系列として天・人・地=上中下(天盤・人盤・地盤)と上中下の三丹田の対応図を紹介した。
また、空間系列には中国武術の門派分類をみることができる。天盤系・人盤系・地盤系の門派例を示している。

Vol.41 番外編(その3)では八卦の構造を解説し、Vol.42 番外編(その4)では変化の様子(勢)から解説をした。

③ 老小架_金剛搗碓_3
③ 老小架_金剛搗碓_過渡式3

Vol.41 外三合 三節 番外編(その3)

八卦を通して時間系列を別の角度から観ている。
(太極→陰陽の両儀→四象→八卦)を紹介する。下から上へ変化する八卦生成図は、陰陽の爻が下から初爻→二爻→三爻と積み上げられている

八卦に潜む「三」がテーマだ。

Vol.41 番外編(その3)で易の八卦を構成する爻(こう)を解説する。二種の横棒を陽(ようこう)「⚊」陽 ・陰爻(いんこう)「⚋」といい、生成発展して陰陽→四象→八卦となる。

次に八卦に潜む三才を解説する。
八卦の中で「水と火」の原理を与えられた「坎と離」の二つの卦を例に八卦に潜む三才を解説する。天人地の三才が「地→人→天」の順番で生成される、陰陽の爻が下から初爻→二爻→三爻と積み上げられている。下から「坎」☵は陰→陽→陰、「離」☲は陽→陰→陽というように陰と陽が交互に積み上げられている。次回Vol.42番外編(その4)では変化生成の流れを観てみよう。

Vol.42 外三合 三節 番外編(その4)

坎☵ 離☲を例として、八卦の生成を説明している。坎と離は「水と火」「腎臓と心臓」などと象徴され、八卦の中でも重要な対比に位置付けられている。
陰陽の爻が下から「坎」☵は陰→陽→陰、「離」☲は陽→陰→陽というように陰と陽が交互に積み上げられている生成過程から八卦掌を解説する。

鷹爪翻子拳という門派は関節技を得意とする門派である。関節技のことを専門用語で分筋搓骨や擒拿術といい、他派でも同様の技術が存在している。分筋搓骨法(擒拿)の技術体系~正手→破手→反手からも「三」の構造をみることができる。
正手・破手・反手の体系は各門派にも存在しているが鷹爪翻子拳が特に優れているとされる。

番外編(その4)は変化の様子(勢)から解説をしている。

さらに八卦に潜む「三才」を「構造と変化(勢)」から紹介している。中国武術(中国武学)でいうならば構造とは身体の姿勢で、変化(勢)は身体の動きの変化であり、「定式と過渡式」の面からも観ることができる。

~【コラム】~Vol.41と42

Vol.41 番外編(その3)のコラムでは、
【孫錫堃派八卦掌の学習内容】(三に関する抜粋)を紹介した。

Vol.41 番外編(その3)とVol.42 番外編(その4)のコラムで、【中級者の数息観】を紹介した。及び番外編(その5と6)で補足している。
数息観は集中力を高める訓練として最適である。


【コラム】習武有三貴 貴博貴精尤貫通

武術修行において三つの貴ぶべき事柄とは、
「習武有三貴 貴博貴精尤貫通」

【意訳】
「博」と「精」がありさらに最も貴ぶべきことは「通」である。

武術修行する人には二つのタイプがあるとされる。

一つは、自己が学ぶ武術の門派(流派)が最高と信じて少しの疑問も持たない。他の門派には興味も持たず見向きもしない。ひたすら修行に励む。
このタイプは、一つの門派に優れているが視野が狭く、ともすれば「井の中の蛙(かわず)」になりがちである。
もう一つは、様々な門派に興味を持ちいろいろな門派を渡り歩きどれも長続きせず、次々と老師の門をたたき門派を替えていく。
このタイプは、各門派の知識は広いがどれも深みや風格に欠け、平凡になりがちである。
皆さんは武術修行に限らず上記いずれのタイプだろうか

「博」とは博学多才・博識の博で、幅広く豊富な知識を持ち、才能が多方面にわたっていることをいう。自己を狭く限定することなく、幅広い興味をもってできるだけ多くの武術や流派に触れ、良いところを積極的に吸収する姿勢が大切である。

「精」とは精読・精進の精で、一つのことを深く究め追究することをいう。自分の専門とする門派を系統的かつ総合的に探究することが大切である。

「博」と「精」は修行の両輪のようなものでお互いの欠点を補って支えあう関係である。
そして最も大切なことは「通」である。「通」とは「博通」「精通」の通で奥義をつかみ悟りを得ることといえる。武術の奥義を得るとは、「博」と「精」が揃ってこそ最高の境地を得ることができる。

【注釈】
※ 参考文献 『中国口伝に学ぶ武術の奥義名言集』永井義男著 アドア出版
老師からの伝承のことばを上記の本を参考に編集

「中国武学への道」の記事一覧はこちら
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「中国武術への道」の記事一覧はこちら
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